大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)146号 判決

被告人 正金金融株式会社 外

〔抄 録〕

所論は、「被告人会社又は被告人中村が借受金をした相手方は、いずれも被告人会社と特定の関係にあるものに限定されており、不特定多数の者に広く勧誘して全般的に預り金をしたものではない。また被告人会社が日掛もしくは月掛で受入れた金員は株主として株金の払込をなさしめたものであつて決して預り金をしたものではない。」と主張する。よつて考えてみると、貸金業等の取締に関する法律第七条にいわゆる預り金とは「一定の時間を約し、その期間一定の金員を使用することの対価を附して返済する約旨の下に不特定多数の者からする金員の受入れ行為」を指称するものと解するのを相当とすべきところ、原判決挙示の証拠によれば、(一)原判示第一の各契約の相手方(即ち別表第一記載の預金者)等は被告人会社は勿論、被告人中村ともなんら特別の関係を有する者ではなく、被告人中村において、被告人会社の社員たる酒井博、橋爪典正、谷内一雄等に一般から募集を命じ、同人等の勧誘により契約者となつたものであること、右被告人会社の社員達が契約者を勧誘した際には「有利な利息」を好餌として勧誘につとめ、契約者達もこれを目的として募集に応じたものであること、右契約に基く受入金は主として被告人会社の流動資金殊に営業それ自体である貸付金に使用されていることが認められるから、右金員の受入れ行為は不特定多数の者からの受入れであると断定せざるをえないのである。また(二)原判示第二事実の契約についてみると、被告人会社では一応株主総会で増資の決議をしたことになつており、その授受された金員は形式的には株金の分割払であるように装われているけれども、原判決挙示の証拠によると、増資株金払込期限の定めもなく、その株金払込を取扱うべき銀行または信託会社も指定しないで被告人会社が自らその受領行為をしていること、増資決定額以上に無制限に株主と称するものを募集していること、契約者募集の際には相手方に対し利殖に重点を置いた説明を加え株主たるべき旨の説明は全然しておらず、契約者においても被告人会社の株主になる意思は全然もつていなかつたこと、契約額全額の払込を完了した者に対してはなんら株主たるべき交渉もせず、当然に解約金額の払戻をしていること、その払戻については各契約種別に応じ、一定の期間を定めその期間金員を使用したことについての対価を附して返還している事実が認められるから、原判示第二の金員受入れ行為もまた前記法条にいわゆる預り金であることは明らかである。

然るに、所論は「被告人中村は被告人会社の使用人に対し常に不特定の者から預り金をしてはならない旨を命令していたから、仮に被告人会社の使用人達に原判決認定のような所為があつたとしても、被告人中村にはなんら刑責はない。」と主張しているが、記録を精査しても同被告人が所論のような指示を与えたという事実を認めるに足る証拠はなく、原判決挙示の証拠によれば、かえつて被告人中村は、被告人会社の社長として現実にその業務の全般を総括していたこと、換言すれば同被告人は原判示のような各契約の締結に関し、部下の社員に対して包括的の指示を与えていたこと、原判示各契約はいずれも被告人会社の社員が被告人中村の前記指示に基いて勧誘締結したものであつて、その契約の実態は業務日報により逐一社長たる同被告人の許に送られていた事実を肯認することができるから、仮令被告人中村が原判決認定の各契約の締結に関し、個々の具体的取引について一々関与した事実がないとしても、原判示認定の各金銭の受入れ行為は同被告人が被告人会社の業務に関してなしたものであると認めるのに妨げないものである。従つて所論は到底採用することができない。

要するに原判決挙示の証拠によれば、原判示事実を認定するに十分であつて、所論に徴し記録を精査しても原判決には事実誤認の疑はなく、また法令適用の誤りも存しない。論旨は理由がない。

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